『今月の支払いどうなるの?』
『もしかして働けなくなるの?』

 病室の周りは患者の寝息やテレビを見てくつろぐ音など会話が全然ない。大部屋なのに。
 むしろその方がいい。静かに過ごしたい。
 家族――特に妻から離れたい。
「お父さん大丈夫?」
 紺のブレザーとスカートに白の長袖ブラウスと短い靴下。学校の制服で来た陽鞠は、緑の丸椅子に座って悠真をじっとみていた。
 隣に座っている悠真の兄である陽貴が「大丈夫」と肩を叩いて安心させる。
 悠真の妻結花から返事がない。

「陽鞠ちゃん。大きくなったねー」
「陽貴おじさん、お久しぶりです」
 恭しく頭を下げる陽鞠。どこか他人行儀。2人が会うのは1年ぶりだ。
 年始の挨拶以来である。
 結花は義理の家族に陽鞠を会わせるのを嫌っているため、中々2人がきちんと顔を合わせる機会が少なかった。
 結花は一応義理家族との関わりは極力最低限にしてるが、用が済むとすぐに帰りたがるので、陽鞠は父親の兄弟とあまり喋ったことがない。
 悠真のスマホ通知が見える。
 陽貴は申し訳ないなと思いつつ、悠真のスマホを拝借して、通知を見ていく。
 数分おきに音が鳴る。
 その度に開いた口が塞がらなくなる。

 ――弟は毎日こんな内容のメッセージ貰ってるのか。