声低いし、投げやり感を全面に出している結花に、望海は「じゃぁ、ここは?」と他のお店を指す。
 フレンチのお店だ。
「もうどこでもいいよ」
 結花の投げやりな態度に望海は内心うんざりしていた。
 どこでもいいよなんて嘘だ。
 後で絶対文句言いそう。相手に聞いておきながら、自分の希望通りじゃなかったら不機嫌そうにする。
 そりゃ人から嫌われる。卑怯者だから。
「なによ? 早く行こ」
 結花は望海を放置してすたすたと目的のお店に向かう。
 案内の地図が置いてある方の向かいにあるフレンチレストラン「マドワゼール」へ、望海も置いていかれないように進む。
 スムーズに中に入れた。
 周りは白を基調としてフランス王宮に迷い込んだような世界観。
 BGMは控えめにクラシックが流れ、ほとんどがお客と店員の会話が主役だ。
 二人がけの席に案内された結花と望海。
「よかったね。早く座れて」
「うん。そうだね」
 まるで他人事のように返事をする結花。
 結花は店員を早速呼び出し「今日のおすすめ何?」とメニュー表を読みながら、顔を合わせずに尋ねる。
「本日は……」
 店員からのおすすめを言われ、二人分を頼む。
 今日のおすすめは鯛のポワレがメインディッシュのランチコースだ。