それはお互いが結婚しても同じだ。
 望海は26歳で集団塾のトップである加藤文登と結婚した。文登の方が1つ上だ。
 ネットのチャットで出会ったので、最初は心配されていたが、信頼関係をアピールすることで認められた。
 文登は東の方に元々住んでいたが、大学が結花と望海の地元では有名な神南大学に進学して、その近くの塾――現在先生をしている教室でアルバイトから始まって今に至る。
 結婚式に結花は出席したものの、後で散々文登のことをけなしていたので、それ以来冠婚葬祭以外会わせていない。あろうことかマウントをとっていたのだから。
 私の方が地位が上だから敬えだ、夫は社長だ、望海の花嫁姿より自分の方が可愛いと。
 文登の友人や会社関係者にはぶりっ子モードで連絡先をあちこち交換していた。
 結花の夫の悠真はよくやっているなと感心している。おそらく鈍感なのか我慢強いのかはたまた本当は疲れ切っているのか……それは彼に聞かないとわからないことである。
 二人はレストラン街の案内ボードに向かってあれこれ悩む。
「ゆいちゃん、ここはどう?」
 望海が指したのは自然薯を使ったそば屋「蕎舎(そばや)」である。
「……いいわよ」
 唇を尖らせながら同意する結花。