母は働いてないのに……だからお金があったのかと妙に納得できた。
 唯一の救いは、弟妹が同じ学校の全寮制の学校に通っていたことだろう。
 弟妹は母親から離れたいがためにそこを選んだ。
 当然両親は離婚。
 学校関係と支払いは主に父がやっているものの、負担が大きいと俺にも少し出すように言われている。
 弟妹が楽しく学校に通えればいいんだ。
 自分の生活もあるので、正直苦しい。
 そんな中割のいいバイトを見つけた――目の前にいる子ども達の誘拐及び脅迫。
 条件は指示した日まで”丁重に”扱うことだ。

「ほら、晩飯の時間だ」
 神牧がテレビの時計を指差す。18時過ぎていた。
 その瞬間、曽田のお腹から空腹を訴える音が聞こえた。
「おじちゃん我慢してたんだね。すいもおなかすいたー」
「……っ、早くかたづけようぜ」
 子ども達に笑われたので、視線をそらしてゲーム機を一緒に片付ける。
「片付けたら手を洗って待ってること。返事は?」
「はーい!」
「曽田も!」
「……は、はい……」
「元気ねーな。ちったぁ、この子達を見習え。悪いけど、この子達が手を洗ってるかちゃんと見てくれ」
 特に指の間と手首なと細かく指示が来る。
 お前はオカンかよと思いながら聞き流して、曽田は子ども達と一緒に洗面所に向かった。