「陽鞠、庄吾くん、疲れたでしょ。お父さんが美味しい紅茶いれるね。そろそろ玄関閉めようか」
「……うん」
「先にリビング行ってるね」
 父が淹れる紅茶は美味しい。
 やれ茶葉だの、ティーカップだ色々凝って、いつもうちに持ってきてくれる。
 おかげで色々な種類のものが置いてある。
 
 陽鞠は気持ちを入れ替えて、ドアを閉めようとした瞬間――。
「あ、開いてた! ラッキー! おっじゃましまーす!」
 女性はフライングするかのように、稲本家に入ってドアを閉めた。

 一瞬間が開いて、陽鞠は無意識に後ずさるが、足がもつれて転んでしまった。
 女性の姿に陽鞠は大きな悲鳴を出した。