案の定炎上し、投稿後すぐにどこの学校で名前は誰でどこのお店で起きたか特定され、インフルエンサーによって拡散された。
 しかしその情報も錯綜(さくそう)しているため、無関係の学校の生徒や名前が似ているからと嫌がらせを食らった人も出てきている。その中には、成人した人も含まれていた。
 連日テレビが騒ぐので、便乗して投稿する輩がでてきている。
 発端となった回転寿司屋は今後どうするか、非常識な行動した人達について確認をとっているので、詳しい情報はもう少し待ってくださいと表明している。

 川口が世間話するノリで、炎上した内容がどうのこうのというのは珍しい。
 普段とキャラの違う川口に戸惑う稲本夫妻だが、子供達はそんなこともつゆ知らず「じゃぁね!」と大きく手を振った。
稲本夫妻も振り返し「ちゃんと向こうの言うこと聞くんだよ」「なにかあったらパパかママに連絡してね」と言った。
「名残惜しいとこですが、時間も迫ってるので」
 川口に子供達は促され家をあとにした。
 
 ドアをしばらく開けておきたい気分だ。
 
 夏のムシムシした暑さと生暖かい風が入り込む。

 これでいいんだ。これ以上あの人のことで振り回されたくない。
 平穏な生活を壊されたくない。

 稲本夫妻はしばらく立って玄関を見ていた。