会社クビになってからの動きは知らない。もう知りたくない。

 あの人が前科持ちなのは、夫も義理家族も知ってる。
 結婚の話出た時に破棄しようと思った。
 あの人の血が半分入っている以上、夫家族に迷惑かけるかもしれないと。
 義理両親は『今まで努力された方で、息子のことを大事にしているのが非常に伝わった。陽鞠さんは陽鞠さんで、母親のことで責任感じる必要ない』と言ってくれた。
 義父が叔母夫妻と親族であることを知り、婚約の挨拶で叔母と十数年ぶりに再会した。
 叔母はあの人のことを、蛇蝎のごとく嫌っているから、正直緊張した。

『あの人のことは忘れて幸せになりなさい。もし、陽鞠ちゃんとこに、あの人が来たら、徹底的に潰すから任せとけ』

 それ以来叔母との連絡を時々している。

「今日ね! ”友達の家”に行くんだ! ねっ!」
 翡翠が出した話題に琥珀も「うん!」と同調する。
「友達? これからつとむじーじの家にいくんだけど……誰?」
「”ゆいちゃん”だよ! ちょっと待ってて、ママ!」
 翡翠と琥珀は席を立ち、自分達の部屋から、携帯ゲーム機を持ってきた。
 陽鞠と庄吾と悠真は言葉を失う。
 ゆいちゃんという単語に、陽鞠は胸の中のざわつきを感じた。

 なんだろうこの嫌悪感。喉がヒリヒリする。