世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

「はい、社長室です。総務の吉原さんですね。ただいま社長は不在でして、ご用件は……」
 吉原からかかってきた要件をメモしながら、復唱していく。
「はい、今から荷物運んでくるということですね。承知しました。では、よろしくお願いします」
 吉原が切ったのを確認して、結花は静かに受話器を置いた。
「凄いじゃん! 呉松さん、今の調子!」
 淀みなく内線電話を受け答えた結花に、丸岡と浅沼が拍手する。
「あー、緊張した……なんで、電話なの……」
 結花の顔に疲労が出ていた。

 業務のやりとりなんて、メールとかチャットでいいじゃん。

「電話が面倒な気持ち分かるけど、まだ必要な所が多いからね。それにこれからはオンラインでのやりとりも増えていくだろうから、他の人とのやりとりがスムーズに出来るようになるのに、まずは電話からだよ。チャットでちゃっちゃっと出来たらいいけど、いつも目に通してるとは限らないからね」

「でも、よく頑張ったから、この調子。はい、ご褒美のチョコレート」
 丸岡は机から個包装されたチョコレート菓子を、結花と浅沼に渡した。 
「あ、来たね」
 浅沼は、廊下から聞こえる台車の音に反応して、ドアを開けにいった。
「吉岡です。段ボールの仕分け終わったんで、持ってきました」