「じゃぁ、家かトイレでしてください。今仕事中です」
「あんたみたいな陰キャには、ゆいちゃんが可愛く魅せるために、マメにスキンケアしないといけないのわかんないでしょうね!」
「ええ、わかんないですよ。でも、こういうとこでやっちゃいけないってのは知ってます。琴平(ことひら)さんも落合さんも絶対やってませんから」
「あの2人にそんなの必要なの? やったって、化粧道具が可哀想。どうせ遺伝で家族もブスなんでしょ?」
 結花はクスクスと笑いながら、コンシーラー返してと続けた。
 明らか芋っぽいし、おしゃれに無縁そうだし。そんなお金なさそうだね。あー可哀想。

 その瞬間、結花の首根っこが捕まれた。
 コンシーラーを力強く持ちながら、椅子に座ってる結花を片手で首根っこを掴む郡山。
 その姿は目が据わっていた。
「いい加減にしてくれますかね? 俺を悪くいうのはいいけど、他のみんなの容姿とか家族を悪くのやめてください」
 郡山の顔は赤くなり、顔が能面になる。
 結花は「助けてー」と叫んでジタバタしていたら、椅子からひっくり返った。
「落ち着け! 2人とも!」
 馬乗りになった郡山を同僚の吉岡(ことひら)がひっぺ剥がした。
「なによ! ゆいちゃんに怪我させたね? どうしてくれるの? 治療費払って!」