10月も半ばになり、秋風が吹いてる。
 郡山(こおりやま)と一緒に書類を詰める仕事をしていた。
 この日は丸岡がいないので、結花はさぼっていた。
「呉松さん、仕事してくださいよ」
 結花は鞄からポーチを取り出し、あぶらとり紙で顔を拭きはじめた。さらに化粧直しタイム。
 郡山は結花の行動に言葉がでなかった。

 どうせ言ったところで無理だろうな。また前みたいにやられるのも嫌だしなぁ。
 でも、この仕事チェックしないといけないから、2人でやらないと間違えちゃうし……よりによって丸岡さんいないからなぁ。
 あんな厳しい服部さんですら、呉松さんの横暴さに耐えきれなくって辞めちゃったんだよなぁ。
 てかそこまで追い詰めた人間そうそういないと思う。
 服部さんのかつての被害者としては、嬉しい話だろうけど。
 そもそもこの仕事2人がかりでチェックしないと、間違えちゃう原因になるんだよね。
 協力してもらわないと難しいんだけどなぁ。

「ねー、呉松さーん! サボってないでよぉー」
 とはいえ、結花は「はぁ?」と言って無視。
 まつげにコンシーラーを塗ろうとした瞬間、取り上げられた。郡山によって。
「ちょっとなによ? ゆいちゃん、化粧直し中でしょ? そんな姿見るなんてさいてー!」