彼女が異動したり懲戒にならなかったのが、夫が企画部の部長で、妻のパワハラをもみ消したり、黙認していたから。
 妻と一緒に結花がなにかすると煽ったり、からかったりしている。
 夫妻の間には2人の小学生の子供がいるが、夫の実家に引き取られて、月1回会いに行っている。

「丸岡さん黙ってくれる? こんな犯罪者の分際で、ここで、更生させようなんて図々しくないですか? 優しくしてもらおうとか思ってるのって思い上がりにもほどがある。まぁ、仕事が出来ようが出来なかろうが、真面目にやろうがやんなくっても、この人に優しくする義理なんてないし。こんな女、”人権剥奪”されたらいいのに。こんな無能なんて生きてる価値ある? ないと思うよ? ”殺処分”されたらいいんじゃない?」

 世の中には生きてはいけない人間がいる。この目の前にいるような女のように。
 周りの足引っ張るだけで、何も取り柄のない女。まして前科持ち。
 こんな人間を採用させた人事の目は節穴か?
 
「ねぇ、ここまで言われてどんな気持ち? あんたが今まで言ってきたことだよね? 悲劇のヒロインになろうなんておかしいよね? 因果応報だよ?」

 スキンヘッドの長身の眼鏡をかけた男性――服部の夫の久夫(ひさお)が結花をさらに追い詰める。