介護記録に書かれている日々の周子の様子。
 そしてバインダーには、周子が入所してから、転倒した、アレルギー症状が出た利用者の写真も挟まれていた。 
 その全てが周子と一緒にいるときだった。

「わぁー、すごいねぇー。りょうにいの差し入れで、他の利用者がこんな体赤くなるんだねぇー」
「そーなの。お母さんと一緒にお茶しただけで、こんなになるのって、おかしいよねぇ。たかがアレルギーでしょ? そんなの自分で把握出来ないのがわるいんじゃない?」

 周子ののんびりした口調に大磐は怒りを必死にこらえようとする。

「えっとですね、周子さんは、いつも差し入れを同じテーブルの人達に分ける際に、アレルギーの有無を聞いてたんです。で、S様は卵アレルギーがあることを申し出てました。周子様は成分表を確認しながら、卵がないとおっしゃって分けていました。他の方も同様です」

 職員達とナースの間では、周子が気を遣わせてるようで、実は意図的にやってるんではないかと話が出ている。
 差し入れを分ける際に、職員立ち会いでやったものの、目を離した隙に「入ってないから食べてみて」と、口に入れさせていた。
 同じグループの人達が止めても「嘘だと思うので、証明してよ」とニコニコしながら話すので、誰も止められなかったという。