本音をいうと、あんまり行きたくない。 

 周子は結花が生まれてから、ブランド物の服や靴を買って着飾らせていた。
 対して良輔と静華に対しては、地味な服ばかりだった。
 良輔が小学校の時に入ってた野球クラブで使うスパイクやユニホームを買うのですら、一番安い物ばかりで、結局明博に頼んでちゃんとしたものを買って貰っていた。
 欲しいと言えば「お金がないから」だった。でもその前に「結花の衣服で使ったので」がつく。
 静華も日常の服はスエットや古着屋で買ってきたものばかりだった。
 中学生ぐらいになると、少しはおしゃれしたいと意識しだして、ワンピースを買いたいと言えば、顔がいまいちだから似合わないと一蹴していた。
 欲しいものは買ってもらえない、自分の意向より結花ばかり優先する。
 こっそり明博に買って貰って不満を抑えていた。
 それでは根本的な解決にならない。
 母親が「上2人と末妹で扱いに差をつけていた」という、心の傷は消えない。禍根を残すようなことをしていた。
 
 ――老後というのは、人生の総評、子育ての成績しやかに囁かれている。

 良輔は周子が弱った状況をチャンスだと思っている。
 表向き職員達の前では"母親思いの息子”を演じる。