良輔は穏やかに尋ねるが、今目の前に結花がいることを考えて望海は口ごもる。
 望海の様子を見て良輔は「後ででいいので、また教えてください」と告げた。

「ほら帰るぞ、お礼とお詫びは?」と良輔が結花を無理矢理引っ張ろうとするが、顔も会わせずぷいとそっぽを向く。
 良輔は頭をかいて「人に迷惑かけといて謝罪できないの相変わらずだな」と呟く。
「彼女、生まれてこのかた、"自分で"謝ったことがないのが自慢ですからね」
 笑いながらチクリと嫌味を言う望海に、良輔も「そうだったな」と笑った。

「また馬鹿妹、家のこと何もせずに、子供達含む家族のお金使って、贅沢三昧してたし、パパ活もやってたからな。向こうの家族から相当嫌われてたみたいだ。挙げ句の果てには、子供達のものを売ってたからな。前とちっとも変わってねぇ」
「私は変わったわよ! 少しは家のことしてた!」
「はいはい、それは人が決めることであって、お前自身が言うもんじゃない。今までのこと考えたら信用すらされてなかったんだろうな。大人しく田先(たさき)さんとこの家族のお金返すために、働け」
 良輔は結花の言い分を無視して「本当にご迷惑おかけしました」と告げて、実家に向かった。