「まだお母さんに頼ろうとしてるの? 当主は良輔兄さんでしょ? あとね、ゆいちゃんのお母さん、老人ホーム入ってるよ。あ、ゆいちゃんの場合、両親との面会、良輔兄さんの許可ないといけないから。てか連絡先教えるなって釘さしてる」
 結花の顔色がみるみる悪くなる。

 嘘でしょ? あんな元気だった母が父と老人ホームのお世話になるなんて。
 どこなの? 兄の許可ないとダメってなに?
 ふざけんな、あのばか兄。首つって死ね!

「それ、どこなの? 教えてよ? その前に、家入れて!」
「ごめん知らないの。悪いけど帰ってくれる? 子供達と主人が待ってるし」
「それでもいいから! お願い! 中に入れて!」
 結花は門の前で土下座を始める。
「なんなの! 散々うちの主人馬鹿にしてて、何のつもり? それにね、主人はゆいちゃんのこと苦手なの」
 結花は加藤夫妻の結婚式で、望海そっちのけで、出席している男性達に連絡先の交換をしつこく迫っていた。
 その上望海の夫には地味な陰キャな癖に、ハイスペ多いから出席してやったと言って、凍り付かせた。
 それ以降もちょくちょく望海の夫の前でけなすので、すぐに「極力顔を合わせたくない」となった。
 そのため、望海が夫と結花を鉢合わせさせないように気を回していた。