メッセージアプリには行くねと一言つけただけで、ほぼいきなり訪問するようなもんだ。しかも手土産なし。
 結花に手土産を買うほどの金銭的な余裕がない。
 今手元にあるのは、最低限の着替えと日用品だけで、ブランド物の鞄やアクセサリーは、田先家の家族によって、結花の目の前で、質屋行きとなった。
 質屋には結花が家族のお金を勝ってに使って、遊び回っていたから、その罰として売りにきたと説明した。
 結花は最後までごねていたが、葵依と光河が取り押さえたおかげで売ることができた。
 値段は全部で5万円、家族のお金となった。
 売った後、家族に連れられて大岳台の駅のタクシーロータリーで「先に降りてて。後で向かうから」と言って、消えていった。待てど暮らせど来ない。それも当然である。追い出されたのである。
 家族もどこで待っててとか、そこから先の予定は一切言っていないのだから。
 いかにして結花を追い出すかということで、このような形になった。
 結花が気づいた頃――30分後連絡したがつながらない。何度やっても無理だった。
 1時間経った頃には完全に音信不通となっていた。
 それだけ彼女が家族から嫌われたということである。
 結花は年賀状の住所を思い出して、加藤望海(かとうのぞみ)の家にたどり着いた。