「いじめられる? そういうとこだよ! キミの態度は反感を買うんだよ。このアプリにキミが勝手に私達のお金を引き落として、自分の物にしてるじゃないか。バッチリ残ってる。銀行に問い合わせしようか? 警察に盗難として通報しようか?」
 俊美の案に家族もうんうんと頷く。
 警察という単語に結花は「そ、それだけはやめて!」と懇願する。
 警察に捕まるとか嫌すぎる。世界一可愛いゆいちゃんがそんなのなんて、恥ずかしい。
「たかが数百円でしょ! いちいちうるさいのよ! この無能が! とっとと遺産残して死んでよ! あんた達もバイトしてゆいちゃんのために働いてよ! 私は被害者なのよ!」
 結花はジタバタと暴れて自分は悪くない、被害者と主張する。
 40越えた女性が子供のように暴れる姿は、田先家の人間の笑いを誘った。
「ねぇ、聞いた? こんな状況なのに『世界一可愛いゆいちゃんのために働け』って」
 葵依は結花の物真似をしてからかう。つられるかのように光河も「まじあたおか過ぎて草生える。自分の状況分かってるの?」と手を叩いて大きく笑う。
「な、なにがおかしいの? ゆいちゃん間違ってる? お金ないんだからさ、誰か働かないとやってけないよ? ちょっとぐらい、『ご褒美』で鞄買って悪い?」