ただでさえ、慰謝料の支払いか3万ずつあるし、それプラス夫に借金とか無理に決まってる。そんなの生きていけない。
「働き先増やせばいいじゃないか。貧乏暇なし。
 小人閑居にして不全を処すって言うし、お前には丁度いい処遇だ。じゃ」
 業務事項を伝えるような口調で、離れの門扉が閉ざされた。家の鍵は持ってない。
 離れの電気は古くさく蛍光灯が辛うじて2本つくぐらいだ。
 小さい椅子と流しとお手洗いが申し訳程度ある。
 スマホを開くと辛うじてWi-Fiが届く。

 ――ねぇ、覆水盆に返らずだよ?
 ――因果応報、自業自得。
 ――今まで調子に乗ってたつけだよ? 夢破れたね。

 お金持ちと結婚して、専業主婦で、周りに傅かれて、子どもにも愛される私――今はどうだ?
 子どもからは復讐宣言され、夫からは必要以外出入りするなと離れに連れられて、慰謝料の支払い。ずっとやりたくなかったと言っていたのに、スーパーでせっせと働いているじゃないか。
 実家は兄が継いで、敷居を跨ぐなと絶縁を言い渡された。
 大好きな母の様子も分からない。
 お手伝いさんも来なくなっちゃったから、今まで逃げてきた家事をやらざるを得なくなった。
 全ては夫が倒れたのが悪いのよ。