面談スペースに入るなり、尾澤は結花の体を包む。
「え、あ、お、尾澤さん?!」
「ゆいちゃん、店長に言い返さなかったし、泣かなかっただけでも偉い!!」
 その瞬間結花は緊張がなくなったのか、声を上げて泣き出す。
「そうだよねぇ、ここまで言われたらしんどいよねぇー」
 尾澤は子どもをあやすようなノリで、結花の頭をなでる。
 すげー、さらっさらと呟きながら。
「あ、あんなに、い、言われると思って、なくって……」
「確かに依田さんの第一印象は良くなかった。でも、少しずつ改善してるのは私が1番見てるんだから。農産スタッフの人達もそう。ポップやSNS使って話題になったのはゆいちゃんのお陰なんだ。1回座ろ」
 2人は腰を下ろして弁当を出した。
 結花が店舗のSNSのアカウントを使って、店内ポップの紹介や、本日の特売の宣伝を時々やるようになった。もちろん、尾澤のチェック付きで。
 ポップのイラストが凝っていること、流行の言葉を使ったことから、一部SNSで話題になり、お客が増えた。
 結花はイラスト書いたりデコレーションするのが得意だった。プリクラや加工アプリを使いこなしているからこそ出来ることだった。
「調子に乗ってるって、そんなに悪いことなんですか?」
 結花の呟きに尾澤は返す言葉を考える。