手つきが早くなった、品だしに出していいと言われた。言葉が丁寧になった。
 お客さんを引き込むのが上手。ポップが可愛いとか。
 見た目以外褒められたことがなかった。

 ――ゆいちゃんは可愛いから何もやらなくていいのよ。男の人に養ってもらって生きていくのが一番よ。

 子供の頃から母に言われてきた言葉。
 文字通りに受け取って生きていた。可愛いからなんでも思い通りにやってきたのは、周りが気を遣ってた結果によるもの。
 それに気づかず開き直ってきた。ただ、もう見た目が通用しない年で、シビアになってきたことに最近気づいた。
 店長や尾澤さんの言うとおり中身のない見た目だけ人間だった。
 尾澤さんはそうならないように、私に根気よく向かい合ってくれた。
 言葉遣い、スタッフ達とのつきあい方、店長のトリセツ、店舗や会社の現状、お店の商品がどの時間帯で、季節の狙い目など。あとは、家事のやり方。
これは尾澤さん以外にパートのおばちゃん達にも教えて貰った。
 出来たらきちんと褒めてくれる。それだけでも嬉しい。
 店長はいつも怒ってばっかで冷たい。
 いつ話しかけても。他のスタッフと話してても、私になった瞬間、まるで虫が来たかのようにあしらう。