野崎は大きなため息をついて「他の仕事あるから戻っていい?」と立ち上がる。
「店長! ほっとけって言うんですか?! また来る可能性あるんですよ?」
 尾澤がまなじりを釣り上げて迫る。
「だって警告したんでしょ? ならいいじゃん。それ以上何をしろと? こんな人がいるのは事実だし。言われても仕方ないのでは? 依田さんは《《因果応報》》でしょ」
 野崎は立ち上がってもう他の仕事あるからと、出て行ってしまった。
結花と尾澤が店長と追いかけても、野崎は作業員スペースに腰を下ろして、無視を決める。
「店長、それは言い過ぎです! やめてください」
「そうですよ。依田さんは受け入れて頑張ってるんですから」
 それでも野崎は他人のフリをして作業を続ける。
 尾澤が来てから野崎は結花と関わっていない。
 最低限の挨拶や業務情報は話すが、他のスタッフに比べて冷たい。まるで突き放すような、関わりたくないと言わんばかりに心を閉じる。
 野崎としては、こんな癖のある社長の身内を尾澤に押し付けて、自分の仕事に向き合いたかった。
結花の最初の態度でないわーと思っていた。
 社長である悠真に恨みというか、負の感情を持つようになった。