ローカルスーパーよだ・明王寺店(みょうおうじてん)は昼の買い物客で賑わう。
 バレンタインデーからひなあられが段ボールいっぱいに陳列されている。
 有人レジには長い列ができていて、担当が手早くお客を捌いていく。
 セルフレジでも操作エラーが出たり、慣れてない人がもたついて並んでる人が早くしろと圧力をかける。
 結花は教育係の尾澤がいるときだけ、商品の陳列に出れるようになった。
 今日の目玉商品は個装された小松菜2本入り150円。
 ダンボールに詰められた小松菜を陳列していく結花。
 隣で尾澤が丁寧に置けてるじゃんとか、そうそうその調子と声かける。
 結花は言われて嬉しいのかテキパキとこなす。
 
 ――彼女は《《容姿以外で》》褒められることがなかったのでは? むしろそれ以外は苦手で怒られたり、叱られたりすることが多かった、または見てもらえなかった、教えてもらう機会がなかった。出来て当然みたいな環境にいたからこそ。

 尾澤が結花と一緒にいて出た結論だ。
 結花は最初尾澤に反発していた。男性と思ったら女性だった。同性から言われるのが嫌な結花にとっては、かなりダメージを食らった。
 言葉遣いや態度に注意され続けていたが、ここ最近は《多少》改善した。