店のレジでは申し訳無さそうに対応をしていた。
 結花と望海は周りから視線が注目されていることに全く気づいていなかった。
「ゆ、ゆいちゃん、声が大きいよ」
 望海はまたはじまったと大げさなため息をつく。
 結花は昔から自分が不利になると、泣いてごまかそうとするか、癇癪おこす。ひどい時は八つ当たりで、物を投げられたり、無視される。
 そのターゲットになっているのが、望海と呉松家、夫の悠真、そして自分が気に入らない人――特に立場が低い人たちだ。
 結花は周りがなだめるのが当たり前だと思っているが、兄と姉と父は無視するか厳しく注意する。
 いつもおろおろして周子または望海が機嫌をとっていた。
「ねっ、1回出よう。他の所行こうよ」
 完全に悲劇のヒロインモードになっている結花。
「じゃぁ、のんちゃんがおごってね。私、清栄館(せいえいかん)に行きたいから」
 高い料理店の名前を出されて望海は腹をくくった。
 仕方ない。この人の機嫌が良くなるならと。