依田悠真は実家のリビングでのんびり過ごしていた。
 今日は休みだ。娘は春休みだが部活に行った。
 冬休み前に部活で色々なことを言われて、一時期行きたくない、学校も嫌だと訴えてた。
 理由は妻の過去のこと。担任や同級生に散々言われたと。
 まさか娘の部活に入ってる子の父親が、かつて妻にいじめられてたと聞いた時は耳を疑った。
 娘が嫌がらせされるのはしんどい、先生とちかと話して欲しいと訴え、冬休みに、担任と部長である浅沼智景とその父親で同席してもらった。
 彼に聞いたら本当のことだった。
 ――私は以前から、娘に杖の大切さを話してました。同級生にいたずらで杖を隠されたり、壊されたりされた話もしてます。まさか、その犯人が母親をやってたとは思いませんでした。夏のコンクールで見たんです。
 昔と変わらない喋り方と態度。洪水のように中学時代の思い出があふれ出ました。
 娘は私の昔話を聞いて、お嬢さんに八つ当たりしてるんだと思います。

 遠回しに私の娘が同級生に嫌がらせされるのは仕方ないと正当化しているような物言いだった。
 私が代わりに謝ったって、向こうが許す訳がない。

 ――親の因果って子に報いるっていいますからね。