「実家にお金の支援してもらう」
「周子おばさんや明博おじさんも、いつまでも健在とは限らないよ」
「じゃぁ、義理の両親にお金の支援してもらう。呉松家に嫁いでやったんだからそれぐらいしてもらわないと」
 望海は結花の答えに肩を落とす。
 昔から働きたくないと言っていたけど、あれは冗談だと思っていた。
 中学の時の将来の夢の作文で、みんなが公務員や漫画家とか幼稚園の先生と言っている中で、結花は「お嫁さん」と自信満々に書いて発表して、クラス内が凍りついたのを思い出した。
 当時怖いことで有名だった担任が「お、おう……」とどうリアクションしていいか困惑していたのを今でも思い出す。
「ゆいちゃん、あのさ、そのあげるあげるってその上から目線の言い方やめて! そりゃ悠真さん逃げたくなるよ!」
 正論を突きつけられた結花は目を潤ませる。
「ひ、ひどいよ……私が悪いの?」
 おそらくここでの会話を聞いているお客の大半が「それは結花が悪い」とジャッジするだろう。
 なんせ、結花の甲高い声は店内に響いており、勉強していた高校生の男子グループは「やべーこいつ」と、不愉快そうにイヤホンをつけ始めてた。2人組のマダムは眉を潜めて「ちょっとうるさいわね」「うちも息子の嫁にそう思われているのかしら」と話していた。