「まだ自分の立場を分かってないのか? 《《被害者》》だと思ってる? ――あんたは《《加害者》》だ。己のわがままと嘘の積み重ねとくだらない見栄で振り回されてきた人達が沢山いる。それを償うんだよ! 本来ならうちがあんたの償いを手伝う義理も必要もない。社長が頭下げてきたからやってるんだ! それがなかったら、あんたは、ろくなことしないって人事部長と社長が分かってるからだよ! いい加減自覚しろ! 結花《《おばさん》》!」
 きつめに、あえて地雷の言葉で呼ぶことで、立場を弁《わきま》えてもらう。
 結花が《《おばさん》》呼ばわりされるのを嫌がってるからこそだ。
「おばさんって言わないで! お願いだから!」
 懇願するように結花は尾澤に泣きつく。
「じゃぁ、仕事を真面目にする、言葉遣いをしっかりするんだな。態度悪かったら、《《おばさん》》と呼ぶから。あんたの喋り方は中学生以下。まずは敬語を使って。《《お嬢様育ち》》なんだろ? 楽勝じゃないか? ここでは《《社長夫人》》もつ《《呉松家のお嬢様》》も通用しないから」
 勝ったような笑みを浮かべて制する。
「は、はい、分かりました」
 その場を乗り切るとはいえ、結花はここで初めて敬語を《《多少》》使った。