月曜の朝礼からバックヤードは緊張感に包まれていた。
 まるで何も話すなというような圧力。
 細身で背が高く、髪はスポーツ刈り、シャープな顔立ち大きく開いた目はまるで威圧するかのよう。男性ではなく女性だ。
「今日からこちらのヘルプで来てくださった尾澤万希《おざわまき》さんです」
 野崎は「一言どうぞ」と促す。
「どうも、みなさんおはようございます! 久しぶりにここに来たんで、忘れてるところあると思いますが、みなさんお手柔らかにお願いします!」
 尾澤が声は低めだが、明朗快活《めいろうかいかつ》に挨拶をした後、スタッフ達は大きな拍手で包まれる。
 結花は尾澤の顔を見て「あらイケメン」と少し顔が赤くなる。
 うんうん、私のタイプね。背丈よし、顔よし、声もいいわ。あいつとは大違いね。
 どこの部門に入るの? 後で連絡先交換してもーらお!
 にやついた顔で尾澤に視線を送る結花は、野崎が業務連絡していても、全くメモを取らずだった。
「おーい、そこのあなたー! 真ん中の小柄の人!」
 業務連絡の最中に尾崎の低い声が響く。
 スタッフ達の視線は結花に集まる。
「え? なに? 私?」
 キョロキョロ見回す結花に尾澤は「そうだよ。キミだよ」と続ける。
 野崎は尾澤に反応して業務連絡を止める。