野崎は険しい顔をして事務机にあるシフト表を眺める。
 ローカルスーパーよだ・明王寺店《みょうおうじてん》は全部で8部門ある。惣菜や農産など各部門ごとにリーダーがいて、シフトの管理をして、最終チェックに野崎が行う。
 毎月20日までに休みの希望を出せばだいたい通る。
 他の部門は2、3人ぐらいだが、農産だけだ。こんなに多いのは。
 今日も主戦力である高校生スタッフが「もう無理」と疲労の顔を見せて書類を出してきた。
 特に多いのが農産スタッフ。
 相川和輝(かずき)、太刀川裕美、福島乃々香、塩浦亜純(あずみ)、春日(りん)、細田《ほそだ》あやね……6人退職または異動したいの申し出があった。
 口をそろえて言うのは「依田さんのわがままに疲れた。指示しても反発されるだけ。男性スタッフといたがる」「彼女の独演会に全肯定しないとだめで、嫌がらせをされる」「社長にチクると脅される」と。
 まだ彼女は自分の立場を理解していないようだ。
 いやいや来ているのは分かるし、覚える気がないのか、メモを全然取らない。
 男性スタッフがいる日は"非力な自分"アピールをして、力仕事や手間のかかる業務を一緒にやってぇとねだる。