世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

 当時2人は大学生。
 結花はバイトなんて当然やっていなかった。一方、望海は社会人になる予行練習として、家計を助けるために、趣味であるロリータ系ファッションのお店で週3回バイトをしていた。
 今はそこの本社の事務職をしている。
 働いていない結花にとってこういうことを言われてもピンと来ない。
「ちょっとね……ここでなんだから、いつものところにいこ」
 2人は駅から数分歩いたところにあるショッピングモールに向かった。そこの飲食店街にチェーン店のカフェがある。
 この時期のお昼の3時台になると、制服を着ている学生がワークを広げてにらめっこしている人達で賑わう。2学期の試験が近いからだ。
 二人は奥の2人がけの対面式の席を確保できた。
「……ったく、あのババアが仕事中に風に煽られてころんだんだって。で、病院に行ったんだよ」
「だ、大丈夫だったの?」
「うん、なんとか。ただしばらく働くのはだめってさ」
 結花は注文したパンケーキを切りながらぼやく。
「大事に至らなくてよかったよ。ほら、今日風が強いし、無理ないと思う」
「こんな風で? 私なにも思わなかったよ?」
「《《ゆいちゃんは》》、でしょ? お義母さんスーパーで働いているんだっけ? 普段動き回る人ですら、こうなるんだから、ゆいちゃんはもっと気をつけないといけないよ」