世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

 結花は家に帰って、化粧のやり直しと服を着替えてから再び外出した。
 幼馴染に会いに行くためだ。
 澄江の通院に付き合った後に、お茶する約束をとりつけた。
 ここでも公共交通機関を使わずに、タクシーで待ち合わせ場所に向かう。
「ゆいちゃんこっち!」
 西南中央(せいなんちゅうおう)の時計下に結花を呼び止める声が響く。
 端正な顔立ちで、結花より少し背が高い。
 白のブーツにメルヘンなデザインのワンピース、髪型はツインテールだ。
「のんちゃん、相変わらずスゴい服着てるねー。私の方が似合うかも」
「そうだね。ゆいちゃんの方がいいかも……」
 のんちゃんこと磯崎望海(いそざきのぞみ)は弱々しい声で答える。
 開口一番、遠間しに似合わないねと言われているようなものだった。
 これはいつものことである。
 結花は自分が世界一可愛いと本気で思っているから。
「急にどうしたの? っていつものことよね」
 苦笑いしながら望海は尋ねる。
 結花は望海の都合なんてお構いなしに、いきなり誘ってくる。習い事が始まる2時間前とか、バイトの30分前とか。
 これが学生時代ならなんとかできたが、バイトの十五分前に誘われた時はさすがに断った。
『ゆいちゃんは働かなくていいかもしれないけど、私は家のためにやらないとだめなの。誘うならもう少し前に言ってほしい』