世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

 結花は澄江の肩をさすって気遣う。
「ええ」
 とりあえず気遣ってるふりはしないと。夫に冷徹な人だと思われてしまう。
 全く心に思ってないことを口にするのは簡単だ。
 そうやって今まで自分の思い通りにやってきたのだから。
「私は先に帰るわ。悪いけど、戸塚くんに連絡してくれないかしら?」
「わかった」
 澄江と弘之は駐車場に停めていたシルバーの車に乗って病院をあとにした。
「ねー、ゆーちゃん、家まで送って!」
 上目遣いでおねだりする結花に対して「俺、これからまた戻らないといけないから……それに戸塚さんにお母さんのこと話さないといけないから」
 申し訳なさそうに断る悠真。
 澄江が働いている春の台店のシフト管理は、店長である戸塚がしている。基本的にローカルスーパー「よだ」のシフト管理は、各店舗の店長また副店長が行っている。
「えーいやだいやだ! 可愛いゆいちゃんを車に乗せないの? 私、お義母さんの通院につきあってあげたんだから、これぐらいやってよ」
 唇をとがらせてだだをこねる。
 病院から呉松家からの春の台店にいくと少し遠回りになってしまう。だから正直断りたい。
 しかしここは病院だ。結花の金切り声が結構大きい。耳をつんざくような声だ。
 変に注目されても困る。
「あー、わかったよ!」