「……では、みなさん今日の予定ですが……」
 店長の野崎《のざき》が咳払いをして、特売のスケジュールや仕入れの在庫の確認など説明していく。
 スタッフ達がメモしている中、結花はメモ用紙すら取り出さず、若い男性スタッフばかり視線を向けていた。
 足痛いし、立ってるのしんどーい! 早く終わらないかなー。
 野崎って人は微妙ね。ハゲてるし、顔もブッサイクね。あ、結婚指輪してるってことは、奥さんいるの?
 うわぁ、物好きー。こいつに教えてもらうの? 嫌なんだけど。はるちゃんにしてほしい。
 あ、この子良さげな顔ね。高校生かな? 名前は……登坂《とさか》くんね。後で声かけてみよ!
 結花の目についたのは、スポーツカットで細身の男性スタッフ。
「今日も1日ご安全に!」
 野崎の唱和にスタッフ達も大きな声で続けた。
 何これ、宗教なの? 馬鹿みたい。幼稚園かよ。
 各自の持ち場に蜘蛛の巣散らすかのようにスタッフ達が向かっていく。
「じやぁ、依田さんは、私と陽貴さんとで手続き及び面談します。その後、現場に入ってもらいます」
 結花はよろしくお願いしますも言わず、陽貴に抱きつこうとするが振り払われる。
 こちらですとバックヤードにある小さな会議室。4人ギリギリ入れるぐらいの小規模な部屋だ。