結花はスマホを取り出して実家の父に連絡する。
 眉を寄せて、人差し指で机をトントン叩く。
 なんで繋がらないのよ! 早く出なさいよ!
 婿養子の癖に。可愛い結花ちゃんの電話に出れないの?!
 舌打ちして、今度は母に電話をかけるがこれも繋がらない。
『どうしたの? ゆいちゃん?!』
 やっと出てきた母の声。安堵のあまり泣きそうになる。
「あ、あのね! 私お金払わないとダメって……」
『あらー、可哀想に……まって、ちょっと代わって欲しいって』
『結花、またお母さんに電話してるのか』
 低い冷たい声に結花は一瞬肩がぴくついた。
「に、りょう兄? な、なんでよ! 今お母さんと電話してるの! 代わりなさいよ!」
 唾を飲み込んで捲し立てるように威嚇する。
『今までお母さんが結花に支援してたの打ち切りするの決まったから。今度は自分で稼ぎなさい。お父さんもお母さんも了承してる』
「はぁ? なんであんたが偉そうなの? 呉松家の後継ぎになったからって調子乗ってるの?」
 鼻で笑う結花だが良輔は怯むことなく、話を続ける。
『調子乗ってるとか、どの口で言ってんだか。ブーメランすぎて……』
 ヒャヒャと滲み出る良輔の冷笑が結花の怒りをさらに買う。