勉強も生活態度も、家のことも隙を作らないように。
 呉松結花の娘じゃなくて、依田陽鞠として見てくれるために。
 中学に入ってから拍車がかかったけど、部活と勉強の両立や、先生からとやかく言われないように、先輩から言われないように、地道にやってきた。
 母と顔を合わせたくないから、忙しい吹奏楽部を選んだ。
 担任から話された母の在学中の話。
 自分の知らない所で広まってるのかもしれないし、同級生の保護者や先生達の中で面識があった人や、被害にあった人達がいた。そこから知らない人達に話が広まったのかもしれない。
 そもそも地元で有名なお家なので、母の素行が既に広まってたのだろう。
 母がいじめっ子だからといって、私がそうするとは限らない。そうならない様に、見なされないようにやってきた。
 目の前で担任の否定により今までの努力が水の泡になりそうだ。
 なんだか疲れてきた。私はどうも母の罪を償わないといけないみたいだ。
「母親のことを引き合いににされない方法教えようか? ――環境を変えること」
 その一言は陽鞠にとって十分なぐらい心を抉りとった。