最初は同級生から女子ばっかの部活に入るなんてとか女目当てだと散々なことを外野に言われ続けてたが、やり通すことで段々言われなくなった。むしろ男子が入りやすくなった。
 弟曰く「すぐに辞めるととやかくいってくるやつの思うつぼだから3年間やり通す」と。
 男子ですらきつそうなのに、女子同士だといざこざに巻き込まれたらなんて考えていたが、その必要はなかったようだ。
 娘はこういった。

 お母さんと顔を合わせる時間を減らすために、あえてハードな吹奏楽部を選んだ。
 あの人と一緒にいるだけで疲れる。
 わがままでキャンキャンうるさいし、人を大事にしないから嫌い。
 自分がいつも主役でないと嫌な人よ。
 あの人のお陰で、私が主役の日でも、台無しにされ続けてきたんだから。
 それにお父さんが馬鹿にされているのを見ていると、自分もああなっちゃうのかと思うと怖い――私は絶対あの人みたいにはならない。反面教師にする。

 自分にだけこっそり教えてくれた本当の入部理由。
 娘らしい考え方だなと思った。
 実の娘ですら嫌われているのに気づいていないみたいだ。ただ単に反抗期だと思っているそうだが。
 妻は娘が吹奏楽部に入ることを反対したが、私がお金を出すということで落ち着いた。