基本的に彼女がイニシアチブ握ってるから、全部彼女の行きたいとこばっか。
 前回彼女は“どこでもいいよ”というので、博物館選んだら終始不機嫌そうな顔をしていた。
 兄に話したらこの場合のどこでもいいというのは“私の意図を汲んだ上で”という意味だと言われた。うちの嫁さんでもそんなこと言わないから、今のうちに逃げた方がいいと、姉と似たようなアドバイスをもらった。
 今まで女性と3人ほど付き合ったが、全員彼女を紹介した時にはそこまで言われなかった。
 兄と姉が口を揃えてやめとけというのは相当だと思う。
 多分家族も顔を曇らせるだろう。いくら裕福なお家の女性だとはいえ。ネットで家族の悪口を書くのなら、結婚しても続くだろう。
 それでもって高い金額のブランド物欲しがるとなると、浪費家の可能性が高い。
 いつもやたら高そうなとこばっか行ってる気がする。しかも支払いは自分だ。
 毎日家計簿アプリで記録してるけど、デートの度に金額を見るとげんなりする。楽しいというより、まるで子守りをさせられているみたいで。
「ねー、買ってくれないのー?」
 結花の舌足らずな口調が感に触るのか、龍太郎ら「悪いけど、難しいんだ。もう少し……」と深い息をつく。
 龍太郎の服の裾を引っ張る結花は、周りが見えていなかった。