学校帰りと思われる制服姿の学生達がいるのにも関わらず、やたら一際目立つ声がゲームセンター内に響く。
「ねっ、これ取ってよ!」
 服の裾を引っ張りながら、UFOキャッチャーの中にあるアザラシのぬいぐるみを指さす。猫撫で声で。
「ゆいちゃんのためなら頑張る」
 男性はUFOキャッチャーのレバーを慎重に操作していく。
 その目は獲物を狙う狩人だった。
 手前にお目当てのぬいぐるみを掴もうとするが、中々できない。3回ぐらいしてると思う。
 男性は舌打ちしたくなる衝動に駆られた。
 横ではゆいちゃんこと依田結花が、後ろでは順番待ちしているカップルや制服を着た高校生達が数人列を作ってるのが、ガラス越しに反射して見える。
 残念ながら取れなかったようだ。
「あんたつまんない男ね。UFOキャッチャーで満足に1つも取れないなんて!」
 子どものように駄々こねてポカポカと袖口に向かって叩いてくる結花。
「つまんない男で結構! ほら、後ろ並んでるよ」
「嫌だ。取れるまで帰らない」
「りゅうちゃんも説教?」
 即答した結花にりゅうちゃんは重いため息をつく。
 後ろで並んでいる人達はやべーなと言わんばかりに蜘蛛の巣散らすように逃げるか、野次馬根性で遠くから見守る。