以来、彼女の日課は、”ギブソンタケルの部屋”が更新する訪問者との24時間風景をナマナマな画像でチェック…。
ノゾミはそれをダラダラよだれ垂らしながら、目をとろんとさせ、かじりついて閲覧していた。

そんなノゾミが大枚4を用意して、ギブソンタケルの部屋へエントリーするまでにさほどの時間はかからなかった訳で。
でも…、おそらくこれきりになると思うと…。

”私は常連さんは無理だし、そもそも”そこ”には自分を持っていきたくない…”

ノゾミ自身が定めたスタンスはかく無難なものだった。
金銭的な余裕がないということもあったが、言わば渇いた自分の癒しどころを、一点豪華主義でいったれー、エイヤーといったノリに近かったのだろう。

「…ギブ様、ありふれたつまらないことですが、聞いていいですか?私、女として魅力どうですか?」

「自分、オンナを感じない女性はいないや。社交辞令かどうかはよくわかんないけど、たぶん、よそ行なキミなら、自分もよそ行で素敵だよって…」

もうこの返しでノゾミは十分、昇天ものだった。
よそ行な自分、コレこそ自分の普段着だったから。

そんな自分に、仮にイイ男がニアミスしても、彼女が望む言葉、欲するアプローチなどあるはずないって!
こう悟れるジブンをギブ様はさり気にプレゼントしてくれる…。

結局、彼女はこの一回きりで4万円のカレの部屋滞在は永遠に終わるのであった。
なぜなら、これからたった数か月で”ギブソンタケルの部屋”は主を失ったのだから…。

つまり、ギブ様はあの世へ召された‼
このことを派生ツイッターで知った時の彼女の驚きは、とても言葉にできなかった。

”あんなに元気だったのに…。でも、深刻な病ってことでラウンジから自分の家に移してのメインワークだったんだもんね…”

ノゾミは結構、自分的な落としどころはドライに収めることができた。

しかし…。
それからしばらく啜ると、SNS上で”ギブソンタケルの部屋”関連で無視できないトピックを複数目にするようになると、俄然、ノゾミの若干未練ありな部屋訪問の”それ以上”が無性に欲しくなって、その妄想イメージが脳裏に舞い降りてくるのを払いきれなくなった。

それは無理もない!
なにしろ、ギブ様が現実と夢想のもやもなところにデリバリーで降臨してくれたという体験談を、コアなユーザー女性から発信されたのだから!
いや、一人だけなら、それ幻覚でしょ、もしくは狂言とか…!で済ませられる。

ところがどっこい、そんなツイートやSNS上の書き込みには同じような体験談が次々と寄せられたのだ。
その数、2か月で少なくと6例…。

さらにその後もコンスタントに、”私も!””私にもキター!”といった声が相次ぐ…。