この夜も、時間をかけ、たっぷりとイキあった二人は交互にシャワーを浴びたあと、何気ない会話となったのだが…。

「おい、ノゾミ!この写真入った額の中…、誰かの髪の毛じゃん!きたねーから、取ってやるよ」

そう言うが早いか、上半身裸で、バスタオルを肩にかけたヒサノリは、リビングチェストの上に置かれていたギブソンタケルの部屋から撮った海岸の写真が入った額を掴み取った。

「ダメ―!!」

それを目にすると、望みはパンティー1枚のだらしない格好ですっ飛んで行った。
で、ヒサノリが手にした額をむしり取ると、きょとんとしてる彼に向かって怒鳴りつけた。

「バカ‼人のもの、勝手にさわんなっての!」

「何ムキになってんだよ、お前…」

”このアホに説明したってしょーがないわ。所詮、コイツみたいなガキにギブ様の奥深い思いがわかるかって‼”

真っ赤になって目を吊り上げていたノゾミは、ヒサノリから奪い返した大切なカレとの心を通じ合った証に目線を落とすと、とても穏やかなカオに変貌していた。

それを横目のヒサノリは特段気を悪くした様子も見せず、鼻歌交じりで再び濡れた髪の毛にタオルを押し当てている。
すると…、ヒサノリの頭から抜けた一本の髪の毛が、フローリングの床にふわふわと落ちた…。


***


ノゾミの視界が捉えた、その落ちた一本の毛…。
真っ黒でやや長い、弓なりに曲がった、今カレの髪の毛…。
ギブ様の一本とは似て非なる…、いやいや、とても比較などできよーもない、同じ一本の髪の毛!

ここで彼女は今一度、手にしたギブ様の額に入れてある髪の毛に目線を落とした。
その彼女からしたら、神々しいとさえ感じる太いまっすぐな5センチをまじまじと見つめると、急に体の熱が引いて行く感覚に襲われるのであった…。

どこか妙に生々しいこのコントラストで、ノゾミの中で何かが萎えてしまったようで…!

「おい、アンタの毛、落ちてるって!きったねーな!あとで拾っとけよな‼」

「わかったよ!いちいちうっせーな!」

こういう時、やはりヒサノリ29歳はモロ、ガキだった…。

”あ~あ、私!やっぱ、無理かも、コイツ…。エッチに飽きたら他あたるか~”

ギブ様の宝物な髪の毛が収まった額を胸に抱きながら、水元ノゾミは目の前の現実をカレから遠ざけるように、そう呟くのであった…。






ーFIN♡ー