彼女が自宅のアパートに戻ったのは、午前0時近かった。
そしてすぐに、ギブ様の巡礼を受けた証拠品たる持ち帰った一本の髪の毛をコンパクトから取り出すと、とりあえず小さなビニールケースに保管した。

もはやノゾミの心は晴れ切っていた。
そりゃあ、もうカレはこの世の人ではない。
もう二度と会えないだろう。

でも、寂しさはなかった。
彼女はここに至り、ギブソンタケルという、奇跡の人と出会え、不思議な超常現象を以ってカレと再会できたダブルのミラクル…、それを経験できたことに至高の身をかみしめることができていたのだ。

数日後、水元ノゾミは自分の元にもギブ様がデリしてくれた、一通りの報告をツイッターに乗せた。
彼女はやや抽象的ではあるが、自分がどうやってカの巡礼を受けることができたかを、ギブソンタケルから打ち明けられた、あの部屋を訪れた彼女たちへの想いも汲んで、確信的に発信した。

”できれば、私以外の訪問者全員に、この世の人間ではない…、それでもサイコーにステキだったギブ様とは再会してもらいたい…!”

これは彼女のたどり着いた純心な思い、望みだった。
これ以降、ツイッターやギブソンタケルの部屋から派生したその他のSNSWを通じ、彼女の投じたメッセージを参考にしてギブ様の巡礼を受けたという感謝のコメントが続出する。

水元ノゾミはそんな報告を目にするたび、手放しで喜んだ。
よかった!ホントに良かった…と。


***


そして、それから約1月後…。

ノゾミは自分の部屋でヒサノリ29歳とベッドで抱きあっていた。
そう…、あのあと、彼女はヒサノリを今カレにして、一応は恋人関係になっていた。

それはギブソンタケルからもらった”元気”で、現実の中でもう一回頑張ろうという、ポジティブなモチベーションに駆られてではあった。

「ああん…」

ヒサノリとは、セックスの相性は悪くなく、彼とのエッチにノゾミはそこそこ満足していたのだ。

彼は優しかったし、ルックスもまあまあ…、ややガキっぽく底浅い感性とかは時折カンに障るが、所詮ギブ様を重ね合わせるという無いものねだりは最初から求めていなかったため、なんとか上手く愛を育てていこうと…。
彼女はトキメキ感も伴った、前向きな気持ちになれていた訳で。
でもしかし~~。