”ウィーン‼ウィーン‼ウィーン‼…”

”本船はこれより海面へ高速浮上の軌道になります。船内に水圧変動調整装置を発動しました…”

人口頭脳アリのアラームインフォメーションが、ヘッドフォンを通してノゾミの両耳に届くと、船内は上下左右に細かい痙攣のような振動に呑まれ、ノゾミの全身を貫通する。

”グイーン、グイーン、グイーン…‼”

”グオオオオ~~!”

ついにノゾミ号は海面を突破、一気に地上を夜の漆黒に染まった上空へと突っ込むと、一直線で大気圏に突入した。

この時点、水元ノゾミは脳内トリップを起こし、超高速突破移動という五感を乗っ取られたトレーチャー疑似操縦で、彼女の平衡意識は飛んでいた。
もはや幻覚世界に身を投じるに至った。

ノゾミ号はあっという間に大気圏を抜けると、ついに宇宙空間へ達する。

”本船は宇宙空間に入りました。これより、自動操縦軌道を確保します。…自動操縦軌道を確保しました”

陸海、そして宇宙空間を万能に遊飛行走できるノゾミ号は、はるか悠久の無限域、壮大極まる大宇宙を踏破…。
こうして現実の時間として25分のハイパー・トライアル・ツアーは、ノゾミ号が無事、大宇宙から地球に帰還して終了した。