***


午後9時55分…。
いよいよ、水元ノゾミが搭乗できる順番がやってくる。

彼女は搭乗前に、大きく深呼吸したあと、自分に言い聞かせた。

中学校の卒業式リハーサルの席で、貧血状態になり、一瞬ながらどっか他の次元にトリップしたような…、あの感じを脳裏によみがえらせ、基本、その時と同じ感覚に今の自分を催眠誘導させると…。

ノゾミが操縦席シートに着くと、既にこの段階で視界と聴覚は外部から遮断され、一応は別空間に身を置いたことになった。
モード的にも、彼女の望むイメージにほぼワープできている…。

”発射10秒前…、9…、8…、7…”

これより船長&操縦士である彼女の両耳には、ヘッドホンからごエンジン音の轟音がガンガンだ。
正面の大画面モニターも地上から海面に、そして海中へ…。
スタンバイ完了のなか、緊張のカウントダウンが続く!

”…3、…2、…1 …ゼロ‼…○○号、発射しましたー!”

水元ノゾミは未来型複合船でますは深海へと急降下…。
シートは角度がドスンと落ち、モニターと相互した平常感覚では真っ逆さまに落っこちるという体感だった。
この時点でゾミは視覚・聴覚、そして皮膚感覚と平衡感覚を伴うカラダまるごとを体験したことのない高速度で運ばれてる感が脳に届き、もうマインドチェンジはフルオンされていた…。

深海から宇宙空間を突き抜ける今回のトラベル過程は、地球時間にして約25分…。

かくして!
この現世に存命していた、ほぼ終わりに近かった”あの日の24時間”…、我が部屋滞在した水元ノゾミ25歳を、ギブソンタケルのどこか空間浮遊しているであろう”意識”という電子レベルの波動は、彼女の自己誘導するトランスワープした脳波とリンクすることができるのであろうか…⁉