夏也くんは、何も言わずに私の隣にいてくれた。

そのおかげで、私は現状を飲み込むことができた。

「ありがと。夏也くんがいなかったら私、」

“この世にいなかったかも”そう言おうとしたけど、言葉が詰まった。

私の言葉は、夏也くんの胸に包み込まれてしまった。

「なんで、」

その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが切れる音がして、再び涙がこぼれはじめた。

「私、夏也くんが好きなの」

自分でもわかるほどの震える声でつぶやいたのは、めんどくさいと思われたくなくて、ずっと言えなかった言葉だった。

「なんで、なんであの子を信じたの?」

消えそうなほどのか細い声。

聞こえてる?私の声、届いてる?

そう思うと、余計に涙は止まらない。その時、

「あいつを信じたわけじゃない」

という夏也くんの声が、私の中にスッと入ってきた。

「俺だって、春香が好きだ」

私の目をジッと見つめながら、夏也くんはそう告げた。

それはまるで血液のように私の全身を巡り巡って、鼓動を早くさせた。

夏也くんの夜空のように暗くて深い漆黒の瞳から、目を離すことができなかった。

「あいつから、全部聞いた。でも、お前は何一つ悪くないだろ?俺に、全部ぶつけろよ」

”何一つ悪くない”ずっとずっと欲しかった言葉。知らず知らずのうちに私が求めていた言葉を、夏也くんがくれた。

だからこそ、夏也くんになら、言ってもいいと思えた。