僕よりもずっと隣にいた大野君のほうがやっぱり留衣には相応しいんじゃないか。

 そもそも、やっぱり告白するのがはやすぎたんじゃないか。

 もっと仲良くなってから告白していたら、もっと違った今があったんじゃないか。

「まあ、不安になるよね。あの2人、仲良すぎるから」

「うん」

「中学のときもさ、聞かれたことあるんだ。あの2人付き合ってるの? って。男子に。留衣のこと好きっぽかったんだけど、結局諦めたみたい。その人も結構かっこよかったんだけどね」

「そう、だったんだ」

「まあ、無意識のうちに大野も牽制してたみたい」

 矢崎さんはがおーっとライオンのような真似をする。

「僕は直接されたよ。留衣のこと傷付けるやつは許さないって」

「大野が? もう本当に好きじゃん」

 あのときの大野君には嫉妬せずにいられなかった。

 僕と違って、長年隣にいる人の言葉は重みが違う。

 僕の留衣を好きだという気持ちが、ぺらぺらした紙のように感じてしまった。

 けれど、留衣と接するうちにどんどん惹かれていったのは事実で。あの頃よりも今のほうが気持ちが大きいのは本当のことで。

 留衣と大野君は、椅子に座ってたこ焼きを食べている。

 最後の一つをじゃんけんして決めているようだ。本当にお似合いだと思う。

 だけど……。

 ここで見ているだけでいい? 好きな子がほかの人と話しているのをそんなに簡単に受けいれられる? いや、やっぱり僕は留衣が好きだ。

「やっぱり僕、行ってくる」

「頑張って」

 走って、階段を急いで降りて2人の元に行く。

 まだ2人は席に座っている。

「留衣」

 名前を呼ぶと、留衣の目が僕に向いた。

「春樹、君」

「えっと、その」

「なんか用? 用ないならもう行くけど」

「いや、その」

「ごめんね、春樹君。蒼、行こ」

 大野君からではなく、留衣から彼の腕を掴んで僕の前からいなくなろうとする。

 行かないで、話を聞いてほしい、言いたいのに、声が出ない。それならせめて留衣の腕を掴んで。

 でも、そんなことをしたら留衣を困らせてしまう。

 ねえ留衣。覚えていないかもしれないけど、幼い頃ちゃんと僕たちは会ってるんだよ、僕はるいさんじゃなくて、留衣に一目惚れ、したんだよ。

 喉がぎゅっと締まって、声を出そうともがいているうちに2人の姿は見えなくなってしまった。