駅までの狭い道を、留衣を真ん中にして縦に並んで歩く。

 なぜか誰も話そうとせず、沈黙が俺たちの間に流れる。

 そのとき、神山が少し遠くのほうに歩いているのが確認できた。

 俺は後ろを向き

「そういえばコンビニ行きたいんだわ。ちょっと寄っていい?」

 と、ちょうど数メートル先にあるコンビニを指さした。

「あ、それならわたしも、水買おうかな。高校の自動販売機、いつも水ないから」

「じゃあ、わたしも買っちゃおう。今日球技大会だしね」

 再び前を向くと、すでに神山の姿は消えていた。

 コンビニの中にはいると、俺は留衣から離れる。
 
 いつまでもこんなことをしていられないのは分かっていた。いつかは留衣にちゃんと付き合ってもらわないといけない。

 もし、1人で向き合うのが辛いならそのときは俺が一緒に……。

「ってえ、俺またなにを」

 目の前にあったクッキーとチョコレートを適当に手にし、レジの行列に並んだ。

 好きと自覚した途端、全てを留衣に繋げてしまう。

 今まではこんなことなかったのに、俺の世界の中心が留衣にでもなってしまったかのように、留衣なしでは考えられなくなってしまった。

 留衣もきっと同じような感じだ。

 神山が中心にいて、神山のことを無意識に考えてしまって。

 だけど神山が見ているのは同じ名前の別人で。

 それでも必死に笑って隣にい続けて。だけどそれにも限界がきて……。

 留衣のことを思うと、まるで自分が傷付けられたように心臓のあたりがむず痒くなった。