好きになっちゃ、だめでしたか?

 クラスのところに戻る途中、ちょうどるいさんが1人で自動販売機のところにいるのが目にはいってきた。

 やっぱり可愛い。わたしなんかより何倍も、何十倍も。

 るいさんに少しずつ近づいて行く。

「あの」

 るいさんはわたしの顔を見ると「あ」と言った。

「その……今まで、ごめんなさいっ」

 腰を思い切り曲げた。

「春樹君とは別れたので、だからもう、遠慮しないでください」

「え、あの」

 顔を上げると、るいさんは眉を下げてわたしを見ていた。

「春樹君のこと、好きなんですよね? ずっと前から」

 るいさんは少しの間かたまったあと、静かに「そう」と頷いた。

 悲しい、とか、怒る、とかそんなのは感じない。

 やっぱりそうなんだって、ようやく事実を知ることができて肩の荷が下りたような気がした。

 わたしの行動は間違っていなかった。

 両思いの2人の邪魔になっているのは、紛れもなくわたしなんだ。

 わたしが1人我慢すれば、全ては元の位置にちゃんと収まる。

「本当に、ごめんなさい。わたしがなにも考えないで、春樹君の告白を受けいれたから」

「あの、留衣、さん。その、ありがとうございます。わたしのためにそこまでしてくれるなんて」

 るいさんは柔らかくて、少しぎこちない笑顔を見せた。

「いえ、逆に、3ヶ月、すみませんでした。ずっと分かってたのに、春樹君を、春樹君を……好きになっちゃって」

 3ヶ月、長いようで短かったその時間で、わたしは春樹君を好きになってしまっていた。ただ一緒に帰ったり、一度デートしただけなのに、春樹君をすごく好きになってしまっていた。

 でももう終わりなんだ。ううん、終わりなんかじゃなくて、元に戻っただけなんだ。