好きになっちゃ、だめでしたか?

 今日の6限のホームルームは、文化祭の出し物についての話し合いだった。ホームルームの終わり10分前、それまでばらばらだったクラスの意見が1つにまとまった。

「てことで、文化祭はスーパーボウル掬いと射的で決定します」

 この高校では、体育祭に球技大会、それに文化祭が水曜日から日曜日までの1週間を通して行われる。

 先輩の話によると体育祭も球技大会も緩く、文化祭だけはそれなりに盛り上がるらしい。文化祭の1日目は学校外の人も来て、結構賑やかになるという話を聞いていた。

 それより問題は体育祭だ。

 理系クラスのやつらと一緒に1日を過ごさなければならない日。

 本物の【るい】が2人の近くにいるであろう日。
 
 留衣と神山にとっては、どんな1日になるのだろうか。

 神山は分からないが、留衣にとってはきっと逃げたい1日なることはなんとなく想像がつく。

「蒼? どうしたの?」

 まさか自分たちのことを考えているだなんて予想もしていないであろう留衣は、無邪気な表情を見せた。

「え、ああ、いや、文化祭のあとの模試だるいなって」

「あー、そうだよね」

 留衣は机の上に身体を預け、あーっと言いながら腕を伸ばした。

 気付くとまた2人のことを考えている。

 そもそも、もう1人の【るい】が神山に告白すれば一時的に留衣が苦しむだけで万事が解決するのではないか。

 とは言うものの、そもそもその【るい】が神山を好きなのかどうかもはっきりしない。

 2人、いや、3人のことを考えているとチャイムが鳴り、今日という1日から解放されたクラスメイトの声で教室は溢れている。

 部活行こうぜー、帰ろう、なんて呑気な声を耳にするたびに、盛大なため息を吐きたくなる。

 俺は廊下に出て水を飲み、教室に戻ってきた。

 教室にはすでに留衣も神山もいなくて、矢崎の姿だけがあった。

 自分の席には戻らずになにかをしている矢崎に近付いていく。

「なあ、一緒に帰らね?」

「ええ大野と?」

 矢崎はわざとらしく口を尖らせて眉を顔の中心に寄せた。

「お前の意見をちゃんと聞きたい」

 矢崎は、あーっと声を出したあとに「まあ、いいけど」と頷いた。