好きになっちゃ、だめでしたか?

 教室にはホームルームの7分前に到着した。

 結局、神山が留衣を好きなのかどうかを聞くのは不発に終わり、それにうまくかわされたような気がした。

 神山の話というよりも、俺と留衣が幼馴染かどうかというどうでもいい話にすり替えられた。

 ということはやっぱり、神山が好きなのはあの美人の方の【るい】ということで合っているのだろうか。
 
 留衣を見てみると、矢崎と笑いながら話している。

 そのあと神山を見ると、うしろの席のやつと話している。

 どうして関係のない俺があいつらより悩む必要があるんだ、もう考えるのを止めよう、と思うのに頭の中から2人の顔が離れてくれない。

「おおい、大野どうした? さっきから怪人百面相だぞお前」

「今絶賛悩み中」

「あ、分かったわ」

 と言い、クラスメイトで中学時代からの友人の黒川は耳元に顔を近づけてきた。

 生ぬるい息が耳にかかり、鳥肌が立ってくる。

「嫉妬だろ? 上野さん取られて」

 黒川は耳元で囁いてきた。

「はあ!? なに言ってんだよ」

 思わず出た声に、クラス中の視線が自分に注がれるのが分かった。

「なんだよ、なんでそうなんだよ」

「だって、学年1のイケメンにあっさりとられちゃったわけだろ? そりゃあ、不憫ですわ。さっきから2人のこと見てるしさ。もう、バレバレだわな」

 黒川は、ふっと馬鹿にしたような笑いを顔に浮かべる。

「お前、まじ、1回プールに飛びこんでくれば?」

 どいつもこいつも勘違いばっかして、なんで俺が留衣に剛雄もしなきゃいけないんだっていうんだよ。

 だいたい、そんな単純なことだったらこんなに悩まねえから。好きなやつが本当は違うやつかもしれない、っていう意味不明な状況なんだよ、と黒川に言えるはずもなく。

 留衣を見ると目があったけれど、すぐに逸らしてしまった。

 その瞬間、まるで恋に落ちてしまったやつみたいに心臓がどきりと鳴る。

 そんなことありえないのに、みんなが余計なことを言うせいだ。