好きになっちゃ、だめでしたか?

 俺は深く息を吸ってから一度息を止めて、今度は細く吐いていく。

 それから数秒間をあけて話しはじめた。

「あのさ、単刀直入に聞くけど、留衣のことどう思ってんの?」

 神山は一瞬目を逸らし、すぐにまた俺を見た。

「どうって」

「まあ、だから……好きなのかって、話」

 好きとか恋とか、そういう単語を言うだけで自分が小っ恥ずかしくなる。

「多分知ってると思うけど、僕たち付き合ってる」

 神山は当たり前のことを当たり前のように言った。

「うん、知ってる。知ってるけどさ」

 神山が留衣とは違うべつの【るい】を好きだということは、結局憶測に過ぎない。

 例え事実だとしても、誰も神山の口から直接聞いた人はいない。

 間違って告白したんじゃねえの? なんて当たり前に聞けるはずもなく言葉が詰まる。

「もしかして、留衣、なにか大野君に言ってる? 2人相当仲良いみたいだし」

「いや、べつに、なんにも」

 神山は一度視線を落とし、それからなにかに怯えているかのような目を向けてきた。

「その、大野君と留衣は、どういう関係なのかな?」

 神山がその質問をしていた意図を読みとうろとするが、やっぱり読めない。ただ、表情が曇っていることだけは手に取るように分かった。

「幼馴染だよ、ただの」

「その、好きなの? 留衣のこと」

「は? ない。まじでない。それはない。本当にただの幼馴染で、昔からよく遊んでただけで、たまたま同じ高校はいって、たまたま同じクラスなっただけ。腐れ縁ってやつ」

 神山は、ようやく小さくふっと笑った。

「そっか。そこまで言うならただの幼馴染だ」

「当たり前」

「でも……」

 と、神山は再び視線を落とし、しかしすぐに俺を見て笑った。

「そろそろ、教室行かないと小テストに間に合わないね。行こうか」

 門の方を見てみると、人がだいぶ減りぽつりぽつりと足早に歩いている生徒がいるばかりだった。スマホを見ると、ホームルームの10分前になっていた。