好きになっちゃ、だめでしたか?

「あ、うん。あるけど」

 神山はまるで営業スマイルを浮かべた。

「いつ、なら空いてる?」

 やっぱなんでもないわ、と言えばいいのに、口は勝手に話を進めていく。一体自分がなにをしたいのか、自分でも分からない。

「いつでも大丈夫だよ」

 神山は留衣をちらりと見た。

 留衣は怒っているのか困惑しているのか、それとも両方の感情が混ざっているのか、複雑な表情を浮かべて俺と神山を交互に見ている。

 留衣と目を合わせると、首を傾けて眉をくいっと上げた。
 
 矢崎も表情には出していないものの、俺の行動に多少は驚いているようだった。しかし半分、面白がっているようにも見える。

 俺はただ、ただ神山と話がしたかった。神山にちゃんと確かめたかった。

 本当に留衣のことを好きなのか、いつか留衣を振って本当の好きな人のところに行くのか、それまでただ繋ぎ止めているだけなのか。

 俺が聞かなくたって答えを求めなくたって、きっと留衣自身が考えていることだし、いくら幼馴染だからってこんなおせっかいな真似するほうが間違いだってことは分かっていた。

 それでも、留衣があんな顔をするのはもう見たくなくて。幼馴染にはやっぱり笑っていてほしいから。

「じゃあ、今からは?」

「いいけど」

「じゃあ、外で」

 神山は履きかえた靴を再び履きかえ、俺のあとに黙ってついてきた。

 矢崎に目配せをすると「じゃあ、わたしたちは教室行くね」と、いかにも空気を読んだように留衣の腕を掴んで教室の方向へと歩いていった。

 うしろを歩いている神山はなにも話さない。
 
 どうしてなにも言わないのか、それとももうなにを言われるのか分かっているのか。

 本人だからこそ、きっとあのことだろう、と想像はつくのだろう。

 神山の顔を見ると、整いすぎているせいなのか、さっきみたいに分かりやすく表情を変えてくれない限りなにを考えているのか読めない。

 校舎から離れている人気のない食堂の近くまで来ると、神山に身体を向けた。